case53・・・事業性評価融資とは?

「事業性評価融資」や「事業性評価に基づく融資」という言葉を耳にすることがあるでしょうか?

 

端的には、「事業性を評価した担保・保証によらない融資」(以下、「事業性評価に基づく融資」という。)と金融庁が言っているもので、決算書の内容や保証・担保だけで判断するのではなく、事業内容や成長可能性等も評価して行う融資、ということです。

平成26年夏頃にこの言葉が金融庁から出てきます。

(参考:http://www.fsa.go.jp/news/26/20140911-1/02.pdf)

(参考:円滑な資金供給の促進に向けて:http://www.fsa.go.jp/news/27/ginkou/20150730-1/01.pdf)

 

背景には、これまでの金融の在り方はもちろんのこと、国内の人口減少、企業数減少(廃業数>創業数)、都市部への過度な集中による地方経済の衰退懸念、地方創成など様々な要因があります。

これまでの金融機関の在り方として、中小企業や小規模企業や個人事業主向けの融資スタンスが担保・保証、特に信用保証協会に依存したものが多く、プロパー融資(銀行の独自貸し)や信用貸しへの積極的な取り組みが見られませんでした。バブル経済崩壊後の金融行政の縛りが厳しいこともあり、金融機関側も20年来厳しい融資スタンスを続けていました。

担保や保証が不足していれば、業績が伸びていても、融資を受けたくても受けられないため、企業が成長できないというケースも少なくありませんでした。バブル時の負の遺産の整理が進み、国内経済が成長に転じている折、厳しい金融行政を継続することは、「国内経済の成長の足かせ」になりかねないという意見もあるように、監督官庁である金融庁がこれまでの金融行政のスタンスを大きく変更しました。

また、時代の移り変わりと東日本大震災以降、社会や地域の問題解決を目的とした「ソーシャルビジネス」が株式会社やNPO法人等として数多く立ち上がってきたこと、そして、それらの多くが「利益目的ではない、社会貢献型ビジネス」のため既存の融資の枠組みの中では、融資をしにくいという事案が多く、国として金融機関に向けて、これらの新しいビジネスへの対処を求めたものと思われます。

 

とはいえ、なかなか銀行は踏み込みにくい状況にあるのではないかと思っています。

というのも、これまでの銀行の百数十年の歴史から見て、個人保証(連帯保証人や保証人など)、物的保証(預金、不動産、動産など)を担保として、業績(財務・決算内容)や事業計画を評価して、対象となる企業や個人に融資してきたので、金融庁の打ち出した「事業性評価融資」には、正直どのように取り組んでいいのか悩むかと思うのです。意識改革に相当の時間が必要なのではないでしょうか。

 

言葉だけを捉えれば、こういう資金は「融資・貸出」ではなく、どちらかと言えば「投資・投機」に相当すると思われますので、投資家やベンチャーキャピタルの領域なのではなかろうかと。。。

銀行に求めるのはハードルが高過ぎはしないか?というのが率直な意見です。

 

私が銀行員のとき、「これから伸びる!」とか「もうじき株式公開する!」とか「この分野は大きく成長する!」と見込まれるような企業の多くに新規営業をしては、上司とスタンスの違いでお叱りを受けました。

「それはベンチャーキャピタルじゃないと。。。銀行では難しいぞ。」という結果に何度も会いました。

中小企業診断士になってから、そのギャップをより一層強く感じるようになり、銀行を去る決断をした一端でもありました。

 

私が銀行を退職したのは2003年で、当時から日本の人口減少は目に見えていて、40~50年後には人口半減も予想され、このままでは経済全体の規模縮小、地方・地域産業の衰退などをはじめあらゆるマイナス情報が言われていました。

創業率と廃業率の逆転、経営者の高齢化による相続・事業継続・事業承継の困難も指摘されていました。

国としては、構造的な問題を何とか解決し、自然減少と衰退化に歯止めを掛けなければ、国力が国体が維持できないという感じです。

 

これまでの融資スタンスでは、銀行経営も難しくなるのは当然で、振込・ATM等の手数料収入や預金金利差の収益に頼った収益構造は早々に限界となり、融資における金利収入や手数料収入を大きく伸ばさなければ、生き残っていけないと言われていました。

たまたま、私がいた銀行は融資に主力を置いていたので、融資に関する活動は他の銀行と違っていたものの、上記のような「ベンチャーキャピタル」的な融資には程遠い状況でした。

まあ、監督官庁の日銀、金融庁の方針も厳しかったため、仕方ないことではありましたが。。。

 

金融庁の方針が大きく転換した今であれば、私が営業していたようなベンチャーのような企業や財務内容はイマイチだけどこれから伸びそうな企業、技術力がピカイチでも販路が付いてきてないため赤字の企業といったところでも、審査のテーブルに十分乗せることが出来て、融資実行も出来るのではないかと思います。

とはいえ、「事業性評価融資」の取り上げ、審査、融資実行はかなりハードルが高いでしょうね。

担保や保証に頼らない、財務データも万全ではないという状況で、対象とする企業をどう判断していくか。

 

これには相当のノウハウが必要になります。

私が思うに、これらの判断をするには、銀行員としての知識と経験と経営コンサルタントや中小企業診断士といった専門的知識とノウハウの両方を持たなければならないでしょう。

というのは、商品や書類といった明らかに目に見えるモノではなく、見てこなかったモノを評価分析して判断しなければならないからです。

多面的、多角的に見て、それぞれのピースを合わせて、「で、どうなのか」と考えて、「行けるか、行けないか」を見極めるのです。

これは難しいですよ。

 

例(製造業)を挙げれば、次のようなことを見ていく必要があるでしょう。

  1. 経営者の姿勢、やる気、人柄、経歴、人脈、健康状態、家庭環境
  2. 従業員の作業内容、工程間の連携具合
  3. 技術力の裏付け(従業員の技術・処理能力や余力、保有機械の技術・処理能力や余力、材料・技術等の組み合わせ、独自ノウハウ、特許・意匠、非公開技術、作成・納入事例、受賞歴など)
  4. 製品・サービスの特異性や競争力、差別要因
  5. 仕入から納品までの各工程の作業内容、特異性
  6. 商品設計やデザイン設計等初期工程でのノウハウ、工夫、アイデア
  7. 営業・企画・広告のノウハウ、工夫、アイデア、実績、計画
  8. 工場・倉庫・営業所等のレイアウトや5Sの状況、工夫
  9. 工場機械設備、冶具、車両等の保有・稼働状況
  10. 研究・研修の取組状況・実施体制
  11. 仕入先との連携・関係
  12. 販売先との連携・関係
  13. 展開・進出可能なエリア、業界、業種
  14. 専門機関、研究機関、専門家等外部との連携
  15. そのほか

 

企業側としても「事業性評価融資」を望む場合は、上記のような事柄(総じて「知的資産」といいます。)についてキッチリと説明できる資料(「知的資産経営報告書」などと言われるものです。)と「事業計画書や経営計画書」を用意したり、中小企業診断士やその業界に詳しい経営コンサルタントに事業評価書の作成を支援してもらったりし、事業計画書や経営計画書との整合性を保持するようにします。

また、いくら事業性を評価してもらうとしても、いまの銀行融資ではこれまでの実績や業績を無視することは出来ない上、無担保・無保証人が前提であっても、事業に対する本気度を諮る意味でも、場合によっては担保・保証人について検討・用意することも必要ではないでしょうか。

 

一方、銀行としては、無担保・無保証人、保証協会無しとした場合、実績がまだ蓄積されていない場合は、貸し倒れリスクの目安が分からないため、正常債権とするのか、当該債権のみを要注意先債権とするのか、貸倒引当金の率を高めに設定し、融資金利を高めに設定するのかなどのルールを決めると思われ、また制度融資のように、1企業当り最高〇〇万円までや年間の総取扱上限額を決め、万一の場合の損失見込み額を決めた上で取り扱うのではないでしょうか。(取扱実績がまだよく見えてこないので、実際は違うかと思います。)

 

「事業性評価融資」というのは金融庁が方針転換した証であり、新しい取り組みでありますが、本来の金融機関の役目である「その地元企業を支援し、育てていき、地域に貢献しつつ、共存共栄していく」という基本に立ち返ることを、改めて示しているものと感じます。

 

私がいた銀行では、この「事業性評価融資」の意図と似た制度融資「起業家ローン」というものがありました。プロパー融資(銀行独自融資で保証協会は使わない)で無担保で最高5,000万円といったものでした。

ベンチャー的な企業で、経営者が信用に足り、技術力や営業力があり、業績が伸びているものの、担保が乏しいため、資金調達に苦労している企業にその制度を使って融資をしていました。(やはり重要なのは、経営者をはじめとした人と事業計画です。)

まあ、企業格付のレベルがいくらといった財務内容が判断のベースにはありましたが。。。

とはいえ、この制度は革新的で、中小企業診断士的な企業を見る目(いわゆる「目利き能力」)が無ければならないものであったと思います。

 

今回の「事業性評価融資」や「事業性評価に基づく融資」という金融庁の方針は今後の企業支援にとってはとても重要です。

企業は生き物であって、業績には必ず「山もあれば谷もあり」ます。

右肩上がり一辺倒で成長するようなことは無く、成長していてもどこかで踊り場を迎えることもあれば、急降下することもあります。

ただ、先述したように「企業は生き物」であって、そこにいる経営者や従業員が粘り強く頑張り、踏ん張り続ける限り、そんなに簡単には潰れることはありません。

実際、世の中には潰れると思われるような企業が長年存続していますし、何かの拍子で再度成長の波に乗ることもあります。

企業が頑張り続ける限り、銀行や保証協会や経済団体や関係者が支援し続けられる限り、「その企業が死ぬことはありません。」

企業が生き続ける限り、はっきり言って、保証人も担保も有っても無くても関係ありません。

担保や保証人は、企業が潰れるなり、廃業するなりし、清算する必要が出てくるまで関係ないのです。

 

これまでの銀行は、長年に渡る金融庁(旧大蔵省)・日銀検査により、また、それらの厳しい指摘や業務(改善・停止)命令を避けるため、問題となる融資を避ける体質に染まり、リスクを取らなくなってしまっていました。

不良債権が多過ぎるとか収益構造が悪いなどの問題が大きければ、大手銀行や系列銀行との合併や吸収をちらつかせられ、ほのめかされて来たのです。

銀行経営者が委縮するのも仕方ありません。

この犠牲になってきたのが、この25年の大手都市銀行同士合併劇です。あんなのを見せられれば、小さな地域金融機関が委縮して、監督官庁のご機嫌伺をして、リスクを避けるのは当たり前です。

これまでの厳しい監督から金融行政が大きく方向転換するとすれば、喜んで迎合すべきことです。

 

いまの時代は、ベンチャーキャピタル、ファンド、クラウドファンディング、政府系金融機関、独立系企業向け融資会社など競争する相手が多くなっているため、これを機に、スピードを上げて、銀行の融資姿勢、意識改革をしていただきたいものです。

 

「融資」は「資金を融通する」ということです。

リスクを取るのが、本来の「融資」です。

リスクを取らないで貸すのは「貸出」です。

これまでの銀行の融資は「貸出」でしかなかったと言われても仕方ないでしょう。

 

私としては、これを機に企業を判断する目を多角的・多面的にし、専門機関や専門家と銀行・企業が連携し、融資という形での支援の在り方が柔軟になってくれることを願います。

「プロパーと保証協会付と無担保部分をどうするのか。担保と保証人をどうするのか。」というのを「企業の実績、財務、事業計画と事業評価」で総合的に判断し、「どれだけのリスクを銀行と企業でお互いに分かち合うか」を決めていくようになればと思います。

 

「どれだけリスクの少ない融資ができるか、どれだけ安心な融資できるか」ではなく、

「どうすれば融資できるか、お客さんのニーズに応えられるか、喜んでもらえるか」ということです。

 

なお、この「事業性評価融資」に取り組んでいる金融機関は主に、日本政策金融公庫をはじめとし、地域金融機関である地方銀行や信用金庫や信用組合、そして信用保証協会です。また、サポートをしているのは、各地の商工会や商工会議所をはじめとした中小企業・小規模企業を支援する機関になります。

 

この新しい方向・方針が上手く回るようになれば、地域金融機関の自由度も増し、元気な中小企業や小規模企業がもっと輩出されることになるはずです。地域経済が活性化すれば、地方創成の国家戦略にプラスに働きます。

 

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