不動産担保ローンの実例をご紹介します。
この実例は、手続き的に面倒なことが多く、稀有な例です。
当該の取引に関わる金融機関が複数あり、当事者である金融機関すべてに申請および認可を貰った上、手続きをする必要がある案件です。
(この実例では不要でしたが、担保物件の設定方法等によっては、後順位設定の金融機関の承諾も必要となることがあります。)
この実例は、複数の金融機関に説明を行い、承諾してもらう必要がある上、不動産担保取引と融資の実務に詳しく無い場合は、交渉が困難なため、実現しにくい案件でした。
普通であれば、金融機関の担当者や審査部門も面倒くさがり、受付すらしない可能性が高いといえるでしょう。
不動産担保を用いたローンを組む際、以下の実例のように面倒なケースはあまり行われていませんが、あの手この手を思い付けば、工夫と努力次第で如何様にも不動産を活用したローンが可能であることがご理解いただけるかと思います。
変更前 | 変更後 | |
抵当権種類 | 根抵当権 | 根抵当権 |
設定極度額 | 20,000千円 | 20,000千円 |
設定順位 | 1位 | 1位 |
債務者名義 | A | B |
担保提供者 | A | A |
取扱金融機関 | C | D |
債務残高(極度) | 0 | (20,000千円) |
金利設定 | - | 短期プライムレート+2.5%連動 |
後順位設定 | 複数アリ | 複数アリ |
後順位 設定極度計 | 50,000千円 | 50,000千円 |
根抵当権設定極度 合計 | 70,000千円 | 70,000千円 |
(太字は変更箇所) |
上の表を見ていただきたいのですが、変更前と変更後を示しています。
ここで大きな変更箇所があるのにお気づきでしょうか?
大きく変わった箇所は3点あり、それらはつぎの通りです。
- 債務者の名義・・・借入をする人
- 取扱金融機関・・・ローンを組む金融機関
- 債務極度(残高)・・・ローンの残高もしくはローン極度(枠)
はじめに見ていただきたいのが、「債務者の名義」が変更されているということです。
ローンを借りる人が「A氏」から「B氏」に変更されていることです。
「A氏」と「B氏」は親子や兄弟のような親族でなくても、第三者でも現実的に変更可能です。
「債務者の変更」という変更登記をすることで、債務者を変更することが可能です。
2点目には、「取扱金融機関」が変更されています。
「金融機関C」から「金融機関D」に変更されています。
信用金庫、信用組合、農協、銀行、証券会社、その他、どのような金融機関が既に設定しても、その(根)抵当権を他の金融機関等に変更することが可能です。
この実例では、「根抵当権の全部譲渡」ならびに「目的変更」の変更登記を実施しています。
根抵当権であれば、一部譲渡、分割譲渡、全部譲渡、目的変更などが行えますので、その利便性を有効活用したわけです。
3点目には、「債務極度(残高)」が変更されています。
元々残っていた根抵当権は金融機関Cでの有効活用が期待できなかったため、担保はあるものの、資金調達ができない塩漬けのようなものでした。
そこで、新たに金融機関Dへ根抵当権を譲渡して、根抵当権が本来持つ資金調達枠を有効利用することにし、「ゼロ」から「20,000千円」の融資枠を生み出しているのです。
「現状使いようが無いものの、抹消していない根抵当権であれば有効活用ができる方法があるはず!」と考えたことで、見つけた活用方法です。
この実例では、A氏が過去に金融機関Cから借りたローンを完済したものの、不動産担保の設定を抹消せず、そのまま残していた、という前提があります。
また、A氏の所有する不動産には十分な価値があるものの、他にも不動産担保が設定されていました。
第1位に設定され、放置されたままの根抵当権を抹消すると、新しい資金調達枠が確保できるのかどうかが微妙な感じでもあり、「抹消後、新規設定」という一般的な担保設定を選択するかどうかが悩むポイントでした。
「資金調達枠を確保する」ことが依頼案件であったため、イレギュラーであり、手間がかかるものの、根抵当権の全部譲渡・目的変更や債務者変更という方策を選択したのです。
ここで、不動産の所有者は「A氏」であるものの、ローンを借りる借主は「B氏」となるため、「A氏」には連帯保証人・担保提供者となってもらう必要がありました。
「A氏」と「B氏」の信頼関係があってこその話です。
また、取引金融機関との関係も良好で、信頼される間でなければ、ちょっと難しい話です。
この実例を見ていただき、イレギュラーというか面倒くさい案件であることをご理解いただける方は、不動産担保と融資審査に関して相当の知識をお持ちの方であると思います。
銀行員で、こういう案件を持ち込まれると、ちょっと嫌がる方も多いのではないでしょうか。
資金調達は企業や個人事業主にとっては、生命線に違いありません。
不動産に限らず、所有している資産を有効に活用することも大事なことです。
不動産は活用の仕方次第で新しい資金枠を生み出すことも可能です。
上記実例のように難しい案件はそうありません。
不動産を有効活用してローンや資金調達枠を考える場合は、不動産取引や不動産担保に詳しい担当者と相談することが一番です。
お付き合いしている金融機関にそのような担当者がいてくれればいいのですが。。。
不動産担保ローンを取り扱っている会社には、詳しいスタッフが揃っていますし、スピーディに対応してくれます。
銀行との金利設定の違いが多少ありますので、申し込みから調達までのスピードや調達できるかどうかの可能性を考えてみて、銀行や信用金庫等と不動産ローン専門会社のどちらにメリットがあるのか等、よくよくご検討いただきたいと思います。